自宅兼事務所の家賃・光熱費を経費にする方法(家事按分の考え方)

自宅で仕事をしているフリーランスの方や個人事業主の方から、「家賃のどこまで経費にしていいんですか」という質問をよくいただきます。続いて出てくるのが、「電気代は?」「Wi-Fiは?」「持ち家でもいけるんですか?」という追加の質問。気持ちはよく分かります。家のお金と仕事のお金が混ざっている以上、線をどこで引くべきか、自分一人では確信が持ちにくいテーマだからです。

私は税理士の藤村と申します。20代から30代前半まで国税専門官として税務署で働き、その後、税理士として独立しました。国税にいた頃の話で言うと、家事按分は税務調査で必ず話題に上がる論点でした。「なぜこの割合なのか」と聞かれて答えに詰まる方が本当に多かったのです。逆に言えば、根拠さえしっかりしていれば、家事按分はそれほど怖い話ではありません。

この記事では、自宅兼事務所の家賃や光熱費を経費にする「家事按分」について、法律の建付けから具体的な計算方法、税務調査で見られるポイントまでを通しで解説します。読み終える頃には、自分の状況に当てはめて按分割合を決められるようになるはずです。本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。

家事按分とは:自宅兼事務所で押さえておきたい基本ルール

まず、家事按分という言葉が指す範囲と、その背後にある法律のルールを確認します。ここを飛ばして計算式だけ覚えても、いざ税務署から質問されたときに答えられません。

家事費・家事関連費・必要経費の3つの違い

事業者が日々使うお金は、税務の世界では大きく3種類に分かれます。

  • 家事費:純粋なプライベートの支出。食費、家族の衣服代、私的な旅行代など。経費にはなりません
  • 家事関連費:プライベートと事業のどちらにも関わる支出。自宅兼事務所の家賃や光熱費、家族と共用するスマホ代などが該当します
  • 必要経費:事業のために直接使った支出。仕事専用のソフト代、取引先との打ち合わせの交通費、業務委託先への支払いなど

家事按分が問題になるのは、真ん中の「家事関連費」です。家事関連費は、原則としてそのままでは経費になりません。事業に使った部分を「明確に区分できる」場合に限って、その部分だけを経費にできるルールになっています。

経費の意味と範囲については、国税庁の必要経費の意味と範囲(タックスアンサーNo.2210)に明文化されています。「総収入金額を得るために直接要した費用」「業務上の費用」が必要経費の範囲、というのが基本の考え方です。

法律はどう定めているか(所得税法第45条・施行令96条)

家事関連費の根拠条文は、所得税法第45条と所得税法施行令第96条です。条文を要約すると、こうなります。

  • 所得税法第45条:家事費および家事関連費は、原則として必要経費に算入できない
  • 所得税法施行令第96条第1号:家事関連費のうち、主たる部分が業務遂行上必要であり、かつ業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できるものは、その部分を必要経費にできる
  • 所得税法施行令第96条第2号:青色申告者は、取引の記録等により業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額を経費にできる

この「主たる部分」がどれくらいかというと、国税庁の所得税基本通達45-2で、「業務遂行上必要な部分が50%を超えるかどうか」という目安が示されています。詳しくは所得税基本通達 家事関連費(第1号関係)をご覧ください。

青色申告と白色申告で扱いに違いはあるのか

条文だけ読むと、青色申告のほうが有利に見えます。実際、所得税法施行令96条第2号は青色申告者向けの規定で、「直接必要であったことが明らか」であれば経費算入できる、と書かれています。

ただし現場の実務はもう少しシンプルです。先ほどの通達45-2に、こんな一文があります。「50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない」。つまり、白色申告でも、根拠さえあれば事業使用割合が50%以下であっても経費にできる、という運用です。

結論から言えば、青色申告と白色申告で家事按分の扱いに実質的な差はありません。どちらにせよ「合理的な根拠で区分できているか」が問われます。ただし青色申告には10万円〜65万円の特別控除や赤字の繰越など別の優遇措置があるので、自宅兼事務所の経費計上が中心の方でも青色申告は検討する価値があります。

家賃を家事按分する:床面積で計算するのが基本

自宅兼事務所のテーマで一番質問が多いのが家賃です。家賃は金額が大きく、按分の影響もそのまま節税効果に直結します。

床面積按分の計算式と具体例

最も合理的で、税務署から見ても説明が通りやすいのが「床面積按分」です。計算式はシンプルです。

按分率 = 仕事スペースの床面積 ÷ 自宅全体の床面積

例えば、自宅全体が50㎡で、そのうち10㎡を仕事部屋として使っているなら、按分率は20%になります。月額家賃が10万円であれば、毎月2万円が経費にできる金額です。年間にすると24万円が経費に積み上がります。

部屋単位で考えると、こんな計算もあります。

自宅の構成仕事に使う部屋床面積換算月額家賃経費計上額
2LDK(60㎡)6畳の1部屋約10㎡12万円約2万円
1LDK(40㎡)8畳のリビングの半分約6.5㎡10万円約1.6万円
ワンルーム(25㎡)ワークスペースとして3割約7.5㎡8万円約2.4万円

ポイントは、図面か間取り図に基づいて計算根拠を残しておくことです。私のところに来る方には「賃貸契約書に書かれている専有面積を分母に、メジャーで測った仕事スペースの面積を分子に」とお伝えしています。

時間按分という考え方と使いどころ

ワンルームに住んでいて、生活スペースと仕事スペースを物理的に分けられない方もいます。この場合は「時間按分」が選択肢になります。

計算式はこうなります。

按分率 = 1日の業務時間 ÷ 24時間

例えば1日8時間を仕事に使っているなら、8 ÷ 24 = 約33%が按分率です。家賃15万円なら、約4.95万円が経費に計上できる目安になります。

ただし時間按分には弱点があります。「本当に毎日8時間使っているのか」を証明しづらい点です。床面積で按分できる環境なら、迷わず床面積を優先することをおすすめします。時間按分は、ワンルームや、リビングで仕事をしているなど、床面積で切り分けにくい人の選択肢と考えてください。

賃貸契約書に「居住用」と書かれていても経費にできるのか

賃貸契約書の用途欄に「居住用」と書いてあると、「これって経費にしていいんですか」と不安になる方がいます。

結論から言えば、契約上の用途と税務上の経費計上は別の話です。税務上は、実態として事業に使っているかどうかで判断します。居住用契約のまま自宅兼事務所として使っていても、家事按分は問題なくできます。

ただし、契約上の問題は別にあります。賃貸借契約で居住用に限定されているのに、店舗を構えて不特定多数のお客様を招き入れたり、看板を掲げたりすると、契約違反になる可能性があります。来客がほぼなく、自分一人で完結する業務形態であれば、現実的なトラブルにはなりにくいテーマです。心配な場合は管理会社や大家さんに事前確認を取っておくと安全です。

光熱費を家事按分する:費目ごとの考え方

光熱費は家賃の次に金額が大きく、按分の質問が多い項目です。費目ごとに考え方が違うので、それぞれ分けて説明します。

電気代の按分方法(時間・面積・コンセント数)

電気代の按分にはいくつかのやり方があります。代表的なのは次の3つです。

  • 時間按分:1日のうち業務に使う時間の割合で計算する
  • 面積按分:家賃と同じく、仕事スペースの床面積比で計算する
  • コンセント数按分:自宅全体のコンセント数のうち、仕事で使っているものの割合で計算する

例えば平日5日、1日8時間を自宅で仕事しているなら、時間按分は(8×5)÷(24×7)= 約24%。コンセント数按分なら、家全体のコンセント12個のうち、PCやモニター、プリンターなど仕事用に3個を使っていれば、3÷12 = 25%という計算になります。

現場でよくあるのが、「とりあえず電気代の50%を経費にしている」というケース。これはやめてください。50%という数字に根拠がないからです。先ほどの計算例のように、面積でも時間でもコンセント数でも、自分の働き方に合う根拠を1つ選んで明示することが大切です。

ガス代・水道代は基本的に経費にしづらい

ガス代と水道代について、「電気代と同じ割合で経費にしていいですか」と聞かれることがあります。答えは「業種による」です。

ガス代は、調理や入浴に使うのが主目的です。デスクワーク中心のフリーランス、Webデザイナー、コンサルタント、ライターといった業種では、ガスを業務で使う場面がほとんどありません。この場合、ガス代を経費にするのは難しいというのが現実的な判断です。

水道代も同様です。お茶を入れる、手を洗う、トイレを使う、といった用途は業務に直接結びつくものではありません。一方で、飲食店、美容院、ペットトリミングなど水を大量に使う業種では、水道代も合理的に按分できます。

自分の業種を冷静に見て、「本当にガスや水道を仕事で使っているか」を考えてみてください。使っていなければ無理に按分しないほうが、税務調査で余計な指摘を受けずに済みます。

在宅時間が長い人は割合を上げてよいのか

在宅時間が長くなれば、按分割合を上げてよいか。これも頻出の質問です。

たしかに、丸一日家にいて12時間以上仕事をしている方と、平日昼間だけ自宅で働く方では、電気代の実態が違います。実態に合わせて按分割合を変えること自体は問題ありません。ただし、上げるなら根拠も上げてください。「12時間×週5日でやっているので、時間按分は約36%です」と説明できるように、業務時間の記録を残しておくことが前提です。

私のところに来る方には、Googleカレンダーや会計ソフトの稼働ログを「業務時間の証拠」として残しておくよう案内しています。後から振り返って「だいたいこれくらい」と感覚で出した数字は、税務調査では弱いです。

通信費を家事按分する:インターネット・スマホの取扱い

リモートワーク中心の方にとって、通信費は家賃・光熱費に次ぐ大きな項目です。ここも費目ごとに考え方が分かれます。

自宅Wi-Fiの按分は使用日数で計算する

自宅のインターネット回線(光回線やホームルーター)の按分は、使用日数や使用時間を基準にするのが一般的です。

例えば月のうち平日20日を在宅で仕事に使い、残りの8日は家族と共用しているなら、20÷28 = 約71%という按分率になります。月額6,000円のWi-Fi代であれば、4,260円が経費に計上できる目安です。

仕事と家族用途の利用が明確に分けにくい場合は、面積按分や時間按分を使う方法もあります。重要なのは「自分はこの基準で計算した」と一言で説明できる状態にしておくことです。

スマホ料金の按分:国税庁が示している考え方

スマホは仕事とプライベートの両方で使うことが多く、按分の悩みどころです。

国税庁は、在宅勤務に関連して通信費の按分方法の参考例を示しています。基本的な考え方は、業務日数の割合に対して、1日のうち業務に使う時間の割合を掛けるというものです。例えば、月のうち業務日数が20日、勤務時間が1日8時間(24時間のうち約1/3)、月額スマホ代が10,000円とすると、おおよそ20÷30×1/2 = 約33%が業務分の目安になります。

国税庁が示している計算式は厳密には在宅勤務の従業員向けですが、個人事業主が自分で按分するときの参考にもなります。詳しくは国税庁 在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQを確認してください。

業務専用回線にして全額経費にする選択肢

按分に疲れた方には、「業務専用回線を別に契約する」という選択肢もあります。仕事専用のスマホを1台持つ、業務用のモバイルWi-Fiを別契約する、といった方法です。

この場合、その通信費は全額が経費になります。按分計算の手間も省け、税務調査で説明する負担も減ります。月額3,000円〜5,000円の追加コストで按分の悩みから解放されるなら、検討する価値はあるはずです。

私自身も、独立してすぐに業務用スマホを1台持つようにしました。経理が単純になるだけで、毎月の帳簿作業がかなり楽になります。

持ち家の場合の家事按分:賃貸とは違うポイント

ここまで賃貸を前提に話してきましたが、持ち家の方には独自の論点があります。

経費にできる項目(減価償却費・固定資産税・住宅ローン利息)

持ち家の場合、家事按分の対象になる項目は賃貸より幅が広くなります。

  • 建物の減価償却費(土地は対象外)
  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険料・地震保険料
  • 住宅ローンの利息部分(元本は対象外)
  • 修繕費・リフォーム費用
  • 管理費・修繕積立金(マンションの場合)

按分率の計算は賃貸と同じで、床面積按分が基本です。例えば、建物の年間減価償却費が30万円、固定資産税が15万円、住宅ローン利息が年20万円、按分率が20%だとすると、経費にできる金額は(30万+15万+20万)× 20% = 13万円になります。

減価償却費の計算は少しコツが必要です。木造住宅の法定耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造は47年と決まっていて、建物取得価額をその年数で割って毎年の減価償却費を計算します。土地の購入代金は減価償却の対象にならない点に気をつけてください。

住宅ローン控除との関係に要注意

持ち家で家事按分を始めようとする方に、必ずお伝えする注意点があります。住宅ローン控除との関係です。

住宅ローン控除は、住宅を「居住用」として使っていることが前提の制度です。事業使用割合が50%以上になると、住宅ローン控除そのものが受けられなくなります。事業使用割合が10%以下の場合は、ローン控除を全額そのまま使えます。事業使用割合が10%超50%未満の場合は、居住用部分の割合に応じてローン控除額が減らされます。

例えば、自宅の30%を事業に使っているとすると、住宅ローン控除は本来受けられる額の70%しか使えません。床面積按分を高く取りすぎると、家賃の代わりに経費を増やせても、別のところで控除を失います。差し引きで損になるケースがあるので、家事按分を始める前にシミュレーションしておくことをおすすめします。

売却時の譲渡所得への影響

もう一つ、見落とされがちなポイントがあります。持ち家を売却したときの譲渡所得の計算です。

居住用不動産を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる「3,000万円特別控除」という制度があります。ただし、事業用に使っていた部分には、この特別控除が適用されません。

例えば、自宅の20%を事業用として何年も家事按分してきた場合、売却益の20%相当部分には3,000万円特別控除が使えません。長く住んだ家を売る際の税金が大きく変わってくる可能性があります。

短期的な節税効果と、長期的な税負担の両方を見ながら按分割合を決めるのが、持ち家オーナーの腕の見せどころです。

帳簿への記載方法:仕訳と確定申告書の書き方

按分割合が決まったら、次は帳簿に記載するフェーズです。ここでも一貫したルールを持つことが大事です。

仕訳のパターン(都度按分と期末一括按分)

家事按分の仕訳には大きく2つのパターンがあります。

  • 都度按分:支払いの都度、事業用と家事用に分けて仕訳する
  • 期末一括按分:日々の取引はいったん全額を経費科目で計上し、年末にまとめて家事用部分を「事業主貸」へ振り替える

私の事務所の顧問先では、後者の「期末一括按分」をおすすめすることが多いです。理由は、毎月の仕訳作業がシンプルになるからです。会計ソフトを使っている方であれば、freeeやマネーフォワード クラウド確定申告には家事按分機能が標準で備わっていて、設定した割合を期末に自動適用してくれます。

事業主貸を使った具体的な仕訳例

期末一括按分の仕訳例を見てみましょう。仮に、年間の家賃支払いが120万円(月10万円×12カ月)で、家事按分率が20%(事業用)だとします。

毎月の支払い時の仕訳:

借方金額貸方金額
地代家賃100,000円普通預金100,000円

年末(12月31日)の按分仕訳:

借方金額貸方金額
事業主貸960,000円地代家賃960,000円

この処理により、地代家賃の年末残高は120万円 − 96万円 = 24万円となり、これが経費として計上される金額になります。「事業主貸」は、事業の財布から家事用に使ったお金を意味する勘定科目です。

光熱費や通信費も、同じ要領で処理できます。費目ごとに按分率が違う場合は、それぞれ別の按分仕訳を切ります。

青色申告決算書・収支内訳書への記載

確定申告書本体(第一表)には経費の内訳を細かく書く欄はありません。経費は、青色申告者なら「青色申告決算書」、白色申告者なら「収支内訳書」にまとめて記載します。

家事按分した家賃なら「地代家賃」欄に按分後の金額を記入します。電気代や通信費は「水道光熱費」「通信費」欄に按分後の金額を記入します。

備考欄や摘要欄を活用して、按分根拠を一言添えておくと、税務署からの問い合わせを未然に防ぐ効果があります。例えば「家賃 家事按分20%(仕事部屋10㎡÷専有面積50㎡)」「電気代 家事按分25%(コンセント3口÷全12口)」のように書いておくイメージです。

税務調査で否認されないための3つのポイント

最後に、税務調査で家事按分が問題にならないための心得をお伝えします。私が国税にいた頃の感覚で言うと、家事按分は調査官が必ず質問するポイントです。

計算根拠を文書で残す

何より大事なのが、按分割合の計算根拠を文書で残しておくことです。

  • 自宅の間取り図に、事業用スペースを赤で囲んだメモ
  • メジャーで計った床面積の記録
  • コンセント数の数え上げメモ
  • 在宅勤務日数の記録(Googleカレンダーなど)
  • スマホやWi-Fiの業務利用ログ

これらは確定申告書には添付しません。ただし、税務調査が来たときに即座に出せるようにしておくのが大事です。私が国税にいた頃、根拠を聞かれて「だいたいの感覚で」と答えた方は、決して印象がよくありませんでした。逆に、間取り図にきれいに線を引いて出してくれた方は、それだけで信頼感が違いました。

一貫性のある按分を続ける

按分割合が年によって大きく変わるのも、税務調査で目立つポイントです。

例えば、ある年は家賃の20%を経費にしていたのに、翌年は40%、その次の年は15%といった具合に変動していると、「根拠は何ですか」と確認されます。引っ越して間取りが変わった、業務量が増えて仕事部屋を広げた、といった合理的な変更理由があれば問題ありません。ただし「なんとなく」で変えるのはやめましょう。

引越しや事業内容の変更があった年は、変更理由と新しい按分根拠を文書で残しておくと安心です。

過大な按分割合を避ける

最後に、按分割合そのものが過大にならないように気をつけてください。

実務上、税務調査で目立つ典型例はこんなパターンです。

  • ワンルームの家賃を80%以上経費にしている
  • 家族と同居しているのに、家賃の半分以上を経費にしている
  • 「だいたい仕事に使っているから」で電気代を70〜80%経費にしている
  • ガス代や水道代を、業務関連性が薄いのに按分している

合理的な根拠があれば高い割合でも認められますが、根拠なく高い割合を取ると、調査官に「何か隠したいことがあるのでは」と警戒されます。経費は「使った分をちゃんと取り戻す」ためのもので、節税のために膨らませるものではありません。

家事按分の安全圏としてよく言われるのが、「家賃・水道光熱費は50%以下」「通信費・車両関連費は90%以下」という目安です。これは絶対的なルールではなく、あくまでも目安です。50%を超えても根拠があれば認められますし、逆に40%でも根拠がなければ否認されます。

まとめ

自宅兼事務所の家事按分について、ここまで7つの観点で見てきました。要点を振り返ります。

  • 家事関連費は原則として経費にならない。事業使用部分を明らかに区分できる場合に限り経費算入が認められる
  • 家賃は床面積按分が基本。ワンルームなど分けにくい場合は時間按分という選択肢もある
  • 光熱費は費目ごとに考える。電気代は按分しやすいが、ガス・水道は業種次第
  • 通信費は使用日数や時間で按分する。業務専用回線を持つ選択肢も合理的
  • 持ち家の場合は減価償却費や固定資産税も対象になる。ただし住宅ローン控除や売却時の譲渡所得への影響に注意
  • 仕訳は期末一括按分が実務的。事業主貸を使ってプライベート分を区別する
  • 税務調査では「合理的な根拠を文書で残しているか」がすべて

家事按分は、家計簿で「これは仕事用、これは家族用」と分ける作業に近いものです。難しく考える必要はありません。ただし、分け方の根拠を聞かれたときに「メジャーで測って計算しました」「この期間の業務日数で出しました」と答えられるかどうかで、結果は大きく変わります。

ここまで読んでも判断に迷う点があれば、お住まいの地域の税理士への相談を検討してみてください。個別の事情によって最適解は変わります。特に持ち家で住宅ローン控除との兼ね合いがあるケースや、業種が特殊で按分基準を悩んでいるケースでは、専門家の見立てを一度入れておくと安心です。知っていれば防げる損は、確かにあります。